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あなたに聞いてほしいこと、あなたから聞いてみたいこと。
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夏の思い出。
ひとそれぞれに「夏の思い出」があるように思います。年齢を重ねるごとに増えていく思い出たちを、ときには自分なりに「勝手にベスト10」なんて名目で思い出してみるのも楽しいのではないでしょうか。私の「勝手にベスト5」は次のようなラインナップでしょうか。

5位:スケッチ3倍の刑(デザイン課の学生だったのですが、そのときの夏休みの宿題が40枚のスケッチ。1日1枚描けば苦労もないのですが、休み明けに手をつけていない枚数分が3倍になるという罰則がありました!クラスメイトの中には1枚も描かずに登校して、スケッチ120枚になったツワモノがいました(恐)。
4位:兄と早起きしてクワガタ捕り(クヌギ林の香りが…)
3位:愛知県に引っ越して来て花火大会が身近に(毎年開催される花火大会がとっても楽しみなんです)
2位:初めて海で泳いだ(海水が塩辛いというのはウソだと思っていて、痛い思いをしました:苦笑)
1位:林間学校で肝試しをして散々恐怖に打ちのめされた後に、キャンプファイヤーを囲んで男子が「鬼のパンツ」を踊っていた光景を目にしたときの何とも言えない脱力感。

何だかあまり美しいものはないようですね(笑)。


さて、マレチさんの夏の思い出の中にはどんな光景が閉じ込められているのでしょうか。そっと解凍してみましょう。


-あなたに聞いてほしいこと、あなたから聞いてみたいこと…人はきっとそれを持っている。-



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夏の思い出を探してみた。

思い出はなかなか季節と結びつかない。思い出は美しすぎて眩暈が始まる。思い出は少年時代と結びつく。

思い出は甘酸っぱさを伴いやって来る。

子供の頃お友達のお家でかくれんぼをしていて押入れの中に隠れているうちにいつの間にか眠ってしまったことはありませんか。気が付くといつの間にか雨が降り出していて押入れの中には甘酸っぱい匂いがあふれていた。と唐十郎の描く情景を思い出す。

そうだ「匂いガラス」と思ってアクリルを探す。ガリガリこすって甘酸っぱい匂いを胸いっぱい吸い込む。少年時代の覚醒剤は目覚めではなく夢へと誘う。

夢の中へと目覚めること。「ああ、もう恋などしない」とつぶやく。「最後の夜だから君と歩こう」とつぶやいてみる。

甘い夏の思い出なら甘夏。小鳥の皮むき器のくちばしを突き刺す。プシュと酸っぱい汁がみかんから弾け飛びだす。プシュとむいた汁が眼に飛び込んで目玉が甘酸っぱくなった。果物を食べなくなったのはこの頃からだろうか夏の思い出。

高校時代の夏休み。友達に借りたヒット曲。客間に置かれた旧式のレコード・プレーヤー。ヒット曲を録音する。ラジオ・カセットをレコード・プレーヤーのスピーカーに向ける。録音スイッチをONする。録音中に雑音をたてるのは禁止です。機材が旧式でダイレクトに録音できないレコード・プレーヤーとラジカセ。しかたなくスピーカーからの音をライブ録音する夏休み。

録音が始まると庭のスピッツがキャンキャンと鳴く。録音中止。レコードの針を上げて仕切りなおし。今度はうまく行きそうと音楽は佳境に入る。いいところで一斉に庭の蝉が大合唱。録音中止。思い出のヒット曲カセットにはスピッツとミンミン蝉がゲスト・コーラスで参加している夏の思い出。

10歳の夏休み。千葉館山での臨海学校。露天のような木造のお風呂場。洗面器で前を隠しながら同じクラスのS井君と照れ笑いしながら直立しているツーショットの思い出写真がある。カメラに凝っていた担任のK上先生が撮ってくれた写真。その日は海岸で同じクラスの女子が太ももまで岩場の穴にはまり込んだ。その穴の中には漁船のタールがぎっしり溜まっていた。女の子の右足は真っ黒になった。女の子もお風呂で洗ったのかな夏の思い出。

アルバイトに明け暮れていた20代。夏は千葉御宿に泳ぎに行った。オートバイに二人乗りして折り畳み傘を二本持って早朝の県道を走った。午前8時に到着し海岸にシートを敷いて折り畳み傘をパラソル代わりにしてやがて炎天下でぐっすりと爆睡する。目覚めると既にお昼時。親切なおじさんがポラロイドで二人の写真を撮ってくれた。秋になってポラロイドは壁に画鋲で貼り付けられた。写真の下にはマジックで焼けすぎの二人と書かれていた夏の思い出。

27歳のころ初めてアメリカに行った。ロサンゼルス・オリンピック・アート・フェスティバルに劇団が招待されたのだ。ボナベンチャーというホテルに泊まって、UCLAのホールで公演した。カーテンコール代わりにメソッド訓練を見せる場面があって「お前は目立つ(下手な)のでこのシーンに出なくていい!」と演出家に言い渡されて大ショック。どうしようかと真剣に考えて、その夜ホテルの部屋に演出家を恐る恐る訪ねた。心臓が飛び出しそうになりながら「アメリカまで来たのだからがんばりますので、最後まで出させてください」とお願いすると「あ、いいよ」とあっさり言われた夏の思い出。

夏の思い出は甘酸っぱい。百年たったら僕はいない。百年たったら思い出たちはどの辺りに行っちゃうのだろうか。きっと柱の影でしくしくしくと寂しそうにしているのだろう。だから今のうちに思い出を集めて夜空に投げて星にしてあげよう夏の思い出。

※「匂いガラス」http://www.youtube.com/watch?v=y98AcbAJfzY




【ゲストライタープロフィール】 マレチ

1957年東京生まれ
大学時代に演劇実験室天井桟敷のスタッフを経験。大学卒業後多摩市教育委員会社会教育主事を経て1981年早稲田小劇場入団その後退団。放浪の末1989年10月占い師に転向現在に至る。

マジカルアーマ http://homepage2.nifty.com/magical-ama/

 

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【プロフィール】

2003年/
・フィルムアート社編集長津田博史氏が講師を務めるアートリテラシー講座を受講
2005年/
・15回日本ダンス評論賞にて第1席
2006年/
・現代アート、演劇、ダンスなどについての評論活動スタート
2007年/
・ATL発足。
アーティストのPR支援、「レビュアーのためのワークショップ」を企画・運営
2008年/
・コミュニティFMラジオSAN-Qにてアートに関する番組をスタート(Art Life for SAN-Q)
・アーティストのマネジメント+公演の実施(psycho-lot+ 長野県松本市・10月)
・身体表現誌CORPUS編集員に就任
・webマガジン 名古屋アートライフ編集員就任
2009年/
・ブログ『理由/Re:you』開設

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