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懐かしさに夜更かしするとき。/綿の国星
週末の夜更け過ぎ、ふと本棚に目がとまりました。「…あら、懐かしい。」手に取ったのは、1冊のコミック。ページの端っこが茶色く焼けたそのコミックは確か中学生のころに出会って、夢中で集めたものでした。私が8歳のときに初回本が出ていたというもので、私が手にしたときにはややタイムラグはあったはずですが、そんなことなどまったく気にならないほど自分自身にとっては新鮮で驚きに満ちた世界であると同時に、どこかに懐かしさも覚えていました。当時も今も、なぜか感じる「懐かしさ」は少しづつその感触を変えてきてはいますが、帰着点は同じ。普遍的なメッセージを持つ作品には、そうした不思議な力があるということでしょうね。

中学生当時に集めたマイ・コミック・コレクションを並べてみると、何とも乙女チックだった自分が浮かび上がり、我ながら照れくさいものですね(笑)。当時からショートヘアで小麦色だった私はよく男の子に間違われましたが、心の中は苺模様な女の子だったのでしょう(笑)。え?もちろん、今でもきっとどこかで乙女なんです、ええ、もちろん!


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【綿の国星】1978年1987年LaLa」(白泉社)に不定期連載。第3回講談社漫画賞を受賞。その後1994年2006年おひさま」(小学館)に、続編「ちびねこ」が不定期に連載された。 擬人化された雌の子猫・須和野チビ猫の周辺で起こる人間模様とチビ猫に関わる猫達を描いた作品。(Wikipediaより転載)


金曜日の深夜、ふと眠れずにベッドルームを出ました。なぜ本棚の前に行ったのかは覚えていないのですが、点けたばかりの蛍光灯がまぶしくて目を細めていると、懐かしいコミックが目にとまります。「綿の国星」、ときどきは目にしていたそのタイトルが、その夜だけは急に気になったのでした。1冊目を手に取ると、夢中になって読んでいたころの気持ちが思い出されるように、あっという間に作品の世界に入り込んでいきました。床に腰をおろして、ほんの少しだけ読むつもりが気づけば7巻ほどを一気読み(笑)。今から25年も前に書かれたとは思えない新鮮さ。普段あまりコミックを読む習慣がないので漫画免疫がないのかも知れませんが、綿の国星には家族間の人間性を深く掘り下げたものや社会批判も入っていて、心の中のいろいろなスイッチを押してくれるんです。

例えば7巻に収録されている「ねのくに」はとても怖い作品だと思うんです。とある公営団地でペット禁止のルールが施行され、それまで団地で飼われていたペットたちは保健所に持ち込まれたり(=薬殺ですよね)、捨てられて流行病にかかって死んでいきます。そんな捨てられた猫の1匹が病の熱にうなされながら見る悪夢と現実がリンクしているという設定は、平たく言えば「たたり」みたいなものなのですが、動物愛護や環境破壊の視点から見ると、ある意味大きな説得力を持つようにも思えるんです。捨て猫が見ていた悪夢は、モグラ叩きのようなゲーム盤の上に飼い主の夫婦や住民が順番に登場し、捨て猫はゲームを楽しむように彼らを払い落したり、ハンマーで叩いたりするというもの。また、ゲーム盤の上には捨て猫が住んでいた部屋にある家具や家電、もしくは団地そのものの模型もあるんです。捨て猫がオーブントースターを飼い主のご主人の上に転がすと、実際のご主人の上にもオーブントースターが転げ落ち、それをきっかけに夫婦喧嘩がはじまってしまう。やがて諍いは団地じゅうに広まって、最終的には団地が将棋倒しのように倒壊していくんです。主人公のチビ猫は、捨て猫を看病していましたが、彼は団地の倒壊とともに死んでいきます。悲しいとともに、とても怖い。。

7巻を読み終えるころ、いつも目を覚ますはずの明け方4時を時計がさしていました。フクロウが寝床に帰るように、私もベッドに戻りました。その土曜日は久々にゆっくり眠り、懐かしい気持ちで夢の世界におちていきました。「懐かしさ」と「新鮮さ」…その両方を味わうことの楽しさは、夜を高速で駆け抜けて人を一気に朝に連れていくんですね。


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古くても新鮮な視点を提供してくれるもの、それを私は「old-fashion」というカテゴリーでこのブログマガジンでは取り上げています。これからも、どうぞお楽しみに。。


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プロフィール

HN:
Kei-Ka
性別:
非公開
趣味:
アート鑑賞・旅
自己紹介:
【プロフィール】

2003年/
・フィルムアート社編集長津田博史氏が講師を務めるアートリテラシー講座を受講
2005年/
・15回日本ダンス評論賞にて第1席
2006年/
・現代アート、演劇、ダンスなどについての評論活動スタート
2007年/
・ATL発足。
アーティストのPR支援、「レビュアーのためのワークショップ」を企画・運営
2008年/
・コミュニティFMラジオSAN-Qにてアートに関する番組をスタート(Art Life for SAN-Q)
・アーティストのマネジメント+公演の実施(psycho-lot+ 長野県松本市・10月)
・身体表現誌CORPUS編集員に就任
・webマガジン 名古屋アートライフ編集員就任
2009年/
・ブログ『理由/Re:you』開設

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