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あなたに聞いてほしいこと、あなたから聞いてみたいこと。
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連続コラム/マレチさん①
このブログマガジンでは、ゲストライターの方々に魅力的なテキストを提供していただいています。私がどうも堅いせいか(笑)、みなさんとても軽快でユーモアあふれる読み心地のテキストをご提供いただいているようです。自由にのびのび書くことって、意外とムズカシイのですが、読み手にとってはうれしいですよね。

今回のマレチさんは、ご自身がある演劇公演で経験されたときのお話を書いて下さいました。さりげなく出てくる大物人物に驚いてしまいます(笑)。人生に大きな影響を与える人物は誰しも持っていると思うのですが、離れてしまっても尚、影響を受け続ける人物は人生の宝物と言えないでしょうか。マレチさんの、珠玉の宝物がキラキラ輝くコラムです。


-あなたに聞いてほしいこと、あなたから聞いてみたいこと…人はきっとそれを持っている。-

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ご無沙汰いたしました。

僕は人の話が聞けないようなのです。
相手の話を聞いたそばから話は頭をすり抜けて行くみたいなのです。後で思い返すとどうでもいい話ばかり覚えていて重要部分は記憶から抜けているのです。僕はいっぺんに沢山のことを整理して意識することができないのです。頭が単細胞なのです。

僕は3つ以上の数字を数えることができないようなのです。
品物が幾つあるか数えるとき123456と数え続けていると2桁以上になった辺りで頭の混乱が始まりやがて何個まで数えたか解らなくなり数え直すことがよくあります。そんな時には123456と続けて数えないで、123,456,789,と3個ずつ数えると比較的楽に数えられます。

唐十郎さんが芝居の中で「人間は3つ以上の数が数えられないのだ!」と言っていました。まさにその通りと納得してしまいます。ちなみに唐さんは初潮を迎えた少女は足の指先で物の匂いをかぎ分けるとも言っていました。本題でないけれど本当だろうか?

僕の頭の中では「私」、「あなた」、「彼」、それ以上になると「いっぱいの誰か」になるわけです。

イチ、ニイ、サン、イッパイ、イッパイ、イッパイなのです。

26才の頃劇団に入団していて「昼餐会」構成・演出:鈴木忠志というお芝居の照明を担当しました。照明スタッフは初めての経験でしたが、助手が2人付いてくれて3人で担当しました。

その芝居はアトリエ公演だったので劇場にあるような高級な調光卓はアトリエは持っていなくて、スライダックトランス(変圧器)という器具を調光卓の代わりに使いました。スライダックトランスは写真のように円柱形をした本体の上部に大きなつまみが付いていてこれを回して使います。つまみを回すとこの器具につないである照明器具の明るさを変えることが出来ます。スライダックトランスは全部で5,6個あったように記憶しています。このトランスを右手、左手、時には右足?を使って操作します。瞬時に暗転にする場合にはスライダックを使わずに手元まで引いてきている照明のプラグを引き抜きます。点灯するときにはプラグを差し込みます。とても原始的です。

この公演はホントに必死でした。演出家はいっぺんに沢山のことを注文する。3個以上のことを次々と注文されていっぺんに3個以上のスライダックを操作する。3個以上に弱い僕の頭は、オーバーヒートで泣きそうでした。

「上手を暗く」「明るさもっと落とせ」「そこで暗転」

3個の注文。もうここで頭はストップします。必死でノートに速記し何とか難を逃れる。

「はい全部いっぺんに明るくする」「はい下手だけ消す」「はい音楽とともにゆっくりと暗くする」

ふたたび頭はストップする。演出家は稽古中に演出意図を劇団員に説明してくれる。僕はふむふむと聞いているが稽古が終わった頃には何も覚えていない。頭に入らないのです。

結局必死でノートに書いた段取りを寸分たがわず再現してゆくのみの本番となりました。公演終了後の反省会で今回の照明はよくがんばったと劇団員幹部に褒められたのが慰めでした。必死にやって良かったです。

「頭が悪い」と言う意味は「腰が悪い」とか「胃が悪い」とかと同じで機能の問題なんだと理解したのでした。もっと機能的な頭に生まれて来れば良かったと思いました。

余談ですが。この公演を寺山修司さんが見に来てくださったのが感動でした。客席に置いたボンボンベットに横になって観劇された寺山さんは体調が優れないようでしたが、寺山さんはその数ヵ月後に亡くなりました。
オーバーヒート照明を最晩年の寺山修司さんに観ていただけて幸せでした。

そんな訳で頭が悪いのです。さて次回は先日笠井叡さんに教わった頭のいい存在に転生する方法について書きましょう。ではまたお後がよろしいようで。



【ゲストライタープロフィール】 マレチ

1957年東京生まれ
大学時代に演劇実験室天井桟敷のスタッフを経験。大学卒業後多摩市教育委員会社会教育主事を経て1981年早稲田小劇場入団その後退団。放浪の末1989年10月占い師に転向現在に至る。

マジカルアーマ http://homepage2.nifty.com/magical-ama/

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Kei-Ka
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趣味:
アート鑑賞・旅
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【プロフィール】

2003年/
・フィルムアート社編集長津田博史氏が講師を務めるアートリテラシー講座を受講
2005年/
・15回日本ダンス評論賞にて第1席
2006年/
・現代アート、演劇、ダンスなどについての評論活動スタート
2007年/
・ATL発足。
アーティストのPR支援、「レビュアーのためのワークショップ」を企画・運営
2008年/
・コミュニティFMラジオSAN-Qにてアートに関する番組をスタート(Art Life for SAN-Q)
・アーティストのマネジメント+公演の実施(psycho-lot+ 長野県松本市・10月)
・身体表現誌CORPUS編集員に就任
・webマガジン 名古屋アートライフ編集員就任
2009年/
・ブログ『理由/Re:you』開設

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