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聞き上手と呼ばれる理由/父の遺産①

私は子どものころから、誰かの話を聴くのが大好きでした。お話に耳をすませながら、語る相手の世界に引き込まれていくのが楽しかったのだと思います。そんな性質は大人になった今では「聴き上手」と呼ばれるようになりました。いつも本当に偽りなくお話を伺うのは楽しく、ワクワクしてしまうので、取材などでお話を聴く機会が多い今の暮らしはワクワクがいっぱいの日々だともいえます。人はとかく自分の性質と闘いがちですが、ここだけは(笑)、自分の帰来の性質に感謝したくなるんです。


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小さい頃から根っからの「お父さんっこ」だった私は、どこへ行くにも父といっしょにいたがりました。近所のお散歩から、夏の川遊び、山歩き、場所はどこでも良かったのでしょう。父といっしょにいるのがうれしくて仕方がなかったと記憶しています。夜遅くまで仕事をして帰って来た父を玄関先で迎えるときは、テレビを見ていようと何をしていようと、とにかく駆け出して迎えていました。重いアタッシュケースを父の手から奪い取るようにして持ってあげるのが何よりの愛情表現でもありました。思い出をふり返ると、反抗期を迎えるまでのころは父にベッタリだったと思います。

夜、眠るときには必ず父の手を引き、枕もとでお話を聴かせてもらっていました。それはほとんどが父の少年時代の冒険話。お使いで買い物に出たものの、夜遅くなって怖かったときの話には、大きな満月や村はずれの三本松や、ずる賢いキツネや、父の履いていたゴムぞうりの足音などが絵を見ているように展開して、目が冴えて眠れなかった思い出があります。誰かからお話を聴くことの楽しさは、きっとこのとき知ったのだと思います。


そんな大好きな父も、この2月に永眠しました。癌で少しずつ体力を弱めていった父は、最後の方には驚くような妄想を語るようになりましたが、それでも私は否定せずに聴き続けることにしていました。少年時代の物語と違って、それは飛躍の仕方や奇妙なリアル感や不安な空気が、病の影を偲ばせましたが、私はうなずきながら聴いていました。誰かが自分の話を聴いてくれるということが、とても安心感をもたらすものだと気づいたからです。人は語って安らぎ、聴いて安らぐものなのでしょう。奇妙な会話の行方を見守っていた看護師さんが涙を流していらっしゃったのが今でも深く印象に残っています。

父が私に残したもの。それは「誰かの話を全身全霊を傾けて聴くことが出来る」という、とってもステキ宝物。そして、今こうして生きている私自身というとてつもない大きな奇跡こそが、とても大切な父の遺産なのだと思います。

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プロフィール

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Kei-Ka
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非公開
趣味:
アート鑑賞・旅
自己紹介:
【プロフィール】

2003年/
・フィルムアート社編集長津田博史氏が講師を務めるアートリテラシー講座を受講
2005年/
・15回日本ダンス評論賞にて第1席
2006年/
・現代アート、演劇、ダンスなどについての評論活動スタート
2007年/
・ATL発足。
アーティストのPR支援、「レビュアーのためのワークショップ」を企画・運営
2008年/
・コミュニティFMラジオSAN-Qにてアートに関する番組をスタート(Art Life for SAN-Q)
・アーティストのマネジメント+公演の実施(psycho-lot+ 長野県松本市・10月)
・身体表現誌CORPUS編集員に就任
・webマガジン 名古屋アートライフ編集員就任
2009年/
・ブログ『理由/Re:you』開設

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